概要
藤田美術館が所蔵する国宝「曜変天目茶碗」は、南宋時代(12〜13世紀)に中国福建省の建窯で焼かれた黒釉茶碗で、現存するわずか3碗の曜変天目の一つとして知られています。曜変天目とは、黒い釉薬の表面に青・緑・紫などの光彩を放つ斑紋が星のように浮かび上がる茶碗のことで、その神秘的な輝きから古来より「宇宙を映す器」とも称されてきました。曜変の発生は窯の中で偶然起こる変化(窯変)によるもので、現代に至るまで完全な再現は成功しておらず、その生成メカニズムも未解明の部分が多く残されています。
藤田美術館の曜変天目は、3碗の中でも特に外側にも曜変が強く現れている唯一の作品であり、内外に広がる光彩が大きな特徴となっています。形状は典型的な天目形で、小さな高台、漏斗状に開いた胴、口縁がすぼまる「鼈口(すっぽんぐち)」が見られます。口縁には銀を主体とした合金の覆輪が施され、器としての格式を高めています。
来歴も極めて明確で、最古の所有者として徳川家康が確認され、その後は水戸徳川家に伝来し、大正7年(1918年)の売立で藤田家が購入しました。このように、歴史的背景・美術的価値・希少性の三拍子が揃った作品として国宝に指定され、藤田美術館の代表的収蔵品となっています。現在でもその青い斑紋の美しさは多くの人々を魅了し続けており、茶道具としてだけでなく、東アジア陶磁史の中でも特別な位置を占める名品です。
見所・特徴
藤田美術館の曜変天目茶碗の最大の見所は、なんといっても内外に広がる曜変の輝きです。曜変天目は3碗とも国宝に指定されていますが、その中でも藤田本は外側にも多数の斑紋が現れている唯一の例であり、器全体が星雲のような光彩に包まれています。斑紋は真円状・楕円状・細い輪郭線のみのものなど多様で、見込み(内側)では禾目状に並び、藍や水色の光が流れるように輝きます。その様子は「オーロラのごとく斜めに流れて浮かぶ景色」とも形容され、光の角度によって表情が変わるため、鑑賞するたびに新たな発見があります。
この光彩は釉薬そのものの色ではなく、光の反射によって見える構造色である可能性が高いとされ、CDの表面やシャボン玉の虹色と同じ原理で発色していると考えられています。2016年の理化学分析では、黒釉に含まれる成分が建窯の陶片と一致することが確認され、建盞由来であることが科学的にも裏付けられました。一方で、曜変がどのような条件で生まれるのかは依然として謎が多く、現代の陶芸家が挑戦し続けても完全な再現には至っていません。この「未解明性」こそが、曜変天目の神秘性をさらに高めています。
形状面でも見所が多く、典型的な天目形の端正な姿を保ちながら、口縁には銀合金の覆輪が施され、格式の高さを示しています。高台は小さく丁寧に削り出され、腰には釉溜まりが厚く残るなど、建窯の技術の高さが随所に見られます。見込みには使用痕が残り、かつて実際に茶の湯に用いられた歴史を感じさせます。
さらに、藤田美術館所蔵品の魅力は来歴の確かさにもあります。徳川家康が所持し、その後水戸徳川家に伝わったことが文献で確認されており、1918年の売立で藤田家が購入した際の記録も残っています。このように、名品としての格を裏付ける歴史的背景が明確である点も、鑑賞の大きなポイントです。
また、付属品として水戸徳川家の箱や藤田家の「藤田箱」、螺鈿装飾の天目台などが残されており、これらも作品の価値を高めています。特に天目台は黒漆塗に螺鈿で文様が施され、茶碗とともに鑑賞することで、当時の茶の湯文化の豊かさを感じることができます。
総じて、藤田美術館の曜変天目茶碗は、美しさ・希少性・歴史性・科学的関心のすべてを兼ね備えた名品であり、実物を前にすると写真では伝わらない深い輝きと存在感に圧倒されます。まさに「奇跡の器」と呼ぶにふさわしい国宝です。
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藤田美術館は、スマホでの撮影がOKなのですが、スマホだと輝きがうまく撮れないですね。
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