概要
藤田美術館が所蔵する国宝「大般若経(薬師寺経)」は、奈良時代に書写された代表的な写経で、全600巻から成る大乗仏教の経典「大般若波羅蜜多経」のうち387巻が現存しています。もとは奈良・薬師寺に伝来したもので、巻首には「薬師寺」の朱印が押されており、「薬師寺経」として知られています。奈良時代後半、官営の写経所で770年から約2年をかけて書写されたとされ、伝承では朝野魚養が書いたため「魚養経」とも呼ばれています。藤田美術館に伝わる387巻は、褐色の表紙に白蜜陀撥軸を備えた原装、またはそれに近い姿を保っており、奈良時代の写経の姿を今に伝える貴重な資料です。紙は虫除けのために染められ、巻子装で長さは約10メートルに及ぶものもあります。1967年に387巻が一括して国宝に指定され、日本古代の写経文化を知る上で欠かせない遺品となっています。
見所・特徴
本経の最大の見所は、奈良時代の写経所で書かれた文字の美しさと均整の取れた筆致です。写経所では一定の基準を満たす文字が求められ、誤字があれば給料が減らされるほど厳格な制度のもとで書写が行われました。そのため、一字一字が乱れなく整い、巻末まで均質な筆致が続く点が大きな魅力となっています。また、巻首の「薬師寺印」や裏面の「薬師寺金堂印」が当時の伝来を物語り、歴史資料としての価値も高い作品です。さらに、原装に近い褐色表紙や白蜜陀撥軸が多く残る点は、奈良時代の装丁を知る上で極めて貴重であり、写経文化の実態を具体的に示しています。387巻というまとまった量が一括して残る例は稀で、内容・形態・伝来の三拍子が揃った国宝として高く評価されています。藤田美術館のコレクションの中でも特に重要な位置を占め、奈良時代の宗教文化と書写技術の粋を鑑賞できる名品です。
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